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社会
【内容紹介】
土俵の女人禁制は、本当に「伝統」なのか。
初の女性総理誕生で再び話題にあがった土俵の女人禁制を再論。
第四章として増補した、最新の女人禁制論。
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本書は「女人禁制」に関する問題点を読み解く実践的な試みである。
賛成か反対か、伝統か差別かの二者択一を乗り越えて、開かれた対話と議論を促す。
文化人類学の立場からの考察を主軸に、民俗学や宗教学、歴史学や国文学の成果も取り込んで、総合的に考察する。
女人禁制の問題を考える人にとって長く活用される必読書となるべき1冊。
第一章 相撲と女人禁制 2018年に大相撲の舞鶴巡業の際に、土俵上で倒れた市長を助けるために女性が土俵に上がって「女人禁制」が問題視された出来事を取り上げる。
「土俵の女人禁制」について、その起源と展開を考察する。
近代の国技館開設以後、表彰式などの「近代の儀式」を創出した大相撲は、「国技」としての権威を高めてナショナリズムと同調していった。
戦後は、前近代以来の「土俵祭」の伝統を維持する一方で、表彰式を男性参加に限定して土俵上で行うという矛盾が露呈して、「土俵の女人禁制」が問題視されることになった。
第二章 穢れと女人禁制 「女人禁制」を古代・中世・近世・近代の穢れの変化と関連付けて検討。
古代では、戒律に基づき、仏教寺院の「結界」として女性を排除した。
一方、山と里の間の「山の境界」は、仏教の影響を受けて「山の結界」となり、「女人結界」へと変化。
女性の穢れ観も歴史的に変化し、中世後期には『血盆経』の影響で罪業観や血穢の強調ともに展開し、近世には民衆の間に広がって定着。
明治5年に女人結界は解禁されてほぼ消滅した。
またスリランカやインドの事例など人類学の理論をふまえて、穢れ論の再構築と一般化の可能性を探った。
第三章 山岳信仰とジェンダー 女人禁制の言説を、歴史の中の女人禁制、習俗としての女人禁制、社会運動の中の女人禁制、差別としての女人禁制に分け、ジェンダーの問題を視野に入れて論じる。
地域社会の事例として、現在も女人禁制を維持する大峯山の山上ケ岳山麓の洞川を取り上げた。
神仏分離以後の再編成、国立公園の登録、交通路の整備、山麓寺院の女人解禁、禁制地区の縮小、女性による新たな動き、伝統の再発見、禁制解禁の胎動、世界遺産、日本遺産などを関連付けて、女人禁制の行方を展望する。
第四章 初の女性総理誕生で再び話題にあがった土俵の女人禁制を再論。
併せて大峯山の女人禁制も検討する。
女人禁制をめぐる言説は、前近代と近代以降で意味が異なる。
禁忌から禁止へ、排除へ、特に「差別」と読み替えられて、メディアを介して人権の概念と結合し、強い社会的言説に変貌した過程を追う。
「伝統」もまた近代に創られた概念であり、固定的でなく変化しうる。
今後は二者択一を超え、対話と合意形成を通じて再考する必要がある。
【目次】
まえがき
第一章 相撲と女人禁制
1 問題提起
2 大相撲の舞鶴巡業で起きた出来事
3 主役はマスコミ
4 土俵の女人禁制の意識化
5 土俵祭
6 土俵の祭神の変化
7 表彰式
8 神送り
9 表彰式の再検討
10 國技館の開館
11 土俵と土俵祭の起源
12 大相撲の伝統と近代(1)-國技館以前
13 大相撲の伝統と近代(2)-國技館以後
14 大相撲とナショナリズム-伝統の再構築
15 大相撲の伝統とは何か
16 伝統の行方
表1-1 現代の相撲の女人禁制関連の出来事
表1-2 近世・近代の相撲に関する出来事
第二章 穢れと女人禁制
1 女人禁制への視点
2 堂舎の結界
3 山の境界と開山伝承
4 山林修行・山林寺院・山岳寺院
5 「山の境界」をめぐる女性の伝承
6 境界をめぐる女性性
7 女性の穢れの時代的変化(1)-山岳登拝の規制
8 女性の穢れの時代的変化(2)-規定の精緻化
9 女性の穢れの時代的変化(3)-仏教の影響
10 女性の穢れの時代的変化(4)-疫病と王権
11 女性の穢れの時代的変化(5)-室町時代以降
12 女性の穢れの時代的変化(6)-江戸時代以降
13 修験道と女人禁制・女人結界
14 近代の諸問題
15 結界と禁制、忌避と排除
16 彦山の中世
17 伯耆大山の中世
18 一般論への展開
19 機能論と構造論を越えて
20 海外との比較(1)-スリランカ
21 海外との比較(2)-南アジアと東南アジア
22 穢れ研究の可能性
第三章 山岳信仰とジェンダー
1 ジェンダーの視点
2 女人禁制・女人結界の概観
3 女人結界の解禁
4 女人結界の解禁とその後
5 歴史の中の女人禁制(1)-史料の再検討
6 歴史の中の女人禁制(2)-伝承の再検討
7 習俗としての女人禁制(1)-恒常的規制と一時的規制
8 習俗としての女人禁制(2)-拡大と適用
9 習俗としての女人禁制(3)-海外の事例
10 社会運動の中の女人禁制
11 差別としての女人禁制
12 フェミニズムと山岳信仰
13 大峯山の女人禁制
(1)神仏分離以後の変動
(2)仏教寺院への復帰と再編成
(3)洞川の歴史
(4)洞川の近代
(5)女人結界の変動
(6)観光化と村の変化
(7)「宗教的伝統」か習俗か
(8)近代化の中の女人禁制
(9)国立公園と女人禁制
(10)大きな転機の到来
(11)アメリカ人女性の登山
(12)戦後の強行登山
(13)龍泉寺の女人禁制の解禁
(14)女人禁制・女人結界を維持する理由
(15)女性による新たな動き
(16)女人結界の解禁への外部の働き掛け
(17)女人結界の解禁に向けての協議と挫折
(18)女人結界の解禁の議論を読み解く
(19)世界遺産を巡る諸問題
(20)信仰から伝統へ
21維持派と開放派
22当事者の立場と意見
23相撲の女人禁制と大峯山
24遺産化と資源化
14 女人禁制の行方とジェンダー
表3-1 近代女人禁制関係年表(大峯山を主とする)
表3-2 女人結界の解禁をめぐる三本山と護持院の協議
第四章 土俵の女人禁制
1 女人禁制の現代
2 女性首相の就任と「土俵の女人禁制」
3 「土俵の女人禁制」を問い直す
4 「土俵の女人禁制」を維持する理由
5 相撲は神事か
6 相撲の「伝統」とは何か
7 神聖な戦いの場、鍛錬の場
8 土俵の神聖性について
9 「土俵の女人禁制」の行方
10 「大峯山の女人禁制」再論
11 女人結界と女人禁制
12 女人禁制論の課題
参考文献
図版クレジット
あとがき
増補版 あとがき
索引
【著者略歴】
1949年、東京都生まれ。
慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。
文学博士。
慶應義塾大学名誉教授。
前日本山岳修験学会会長。
著書に『中国南部少数民族誌』(三和書房)、『山と神と人』(淡交社)、『スリランカの宗教と社会』(春秋社)、『神と仏の民俗』(吉川弘文館)、『女人禁制』(吉川弘文館。
講談社学術文庫)、『祭祀と空間のコスモロジー』(春秋社)、『ミャオ族の歴史と文化の動態』(風響社)、『山岳信仰』(中公新書)、『東アジアの民族と文化の変貌』(風響社)、『熊野と神楽』(平凡社)、『日本の山の精神史』(青土社)、『山岳信仰と修験道』(春秋社)、『神楽の文化史』(法藏館)。
編著に『大地と神々の共生』(昭和堂)、『神話と芸能のインド』(山川出版社)、『東アジアの民衆文化と祝祭空間』(慶應義塾大学出版会)、『森羅万象のささやき』(風響社)、『アジアの文化遺産』(慶應義塾大学出版会)等。
1997年に義塾賞、2014年に第11回木村重信民族藝術学会賞、2016年に第18回秩父宮記念山岳賞、2022年に第14回昭和女子大学女性文化研究賞、2025年に第34回日本山岳修験学会賞を受賞。